Вот, как всё прошло у меня.
丁寧な言い回しながら挑発的だ。なかなか面白い奴だな。
「では申し上げますわよ。『おお天におわします神よ、その御世は久遠なれ――』」
モナルカが独特の発音で優雅に詠み上げていく。
聖句は光の現神を讃え、生命の尊さを慶び、魔の存在を否定したもの。詩や句そのものに魔を払う力がありそうだ。
「――以上ですわ。この句を光の現神の徽章が刻まれた場所で唱えればよろしいかと」
「ありがたく受け取ろう」
「では私も失礼いたしますわ。……そこで頭を抱えている方によろしく」
横を見るとカーリアンがしかめ面をして耳を塞ぐように立っている。……さっきの句がそれほど不快だったのか。
「それともう一つだけ……この塔の最上階には魔神が封じられているそうですの。どうかお気を付けて」
天使モナルカが立ち去ると、カーリアンは五臓六腑から吐き出したような深い溜め息を漏らした。
「あなた、良く平然としていられるわね!」
「そう気にする事ではあるまい。聞き流せばいいのだ」
「私はそんなに器用じゃないわよ……生まれてからずっと、光の連中を嫌うように父に育てられたんだから」
カーリアンの父はラダムという悪魔族だ。
カーリアン自身は人間族にも慣れているから偏見や嫌悪感を持ってはいないが、幼少時に刷り込まれた部分は治るものではない。
俺はその点、人間族の母の元で育てられている。
母が殺されて父の魔神グラザに引き取られた後も、父は人間への憎悪を煽るようなことはなかった。
ただ、その父も人間に殺されてしまい、俺は人間族への強い憎しみで身を焦がした……イリーナが現れるまでは。
イリーナと理解し合い、人と魔の共存という同じ理想を目指すことで、俺はその迷いを振り切ったのだ。
「せっかく教えて貰ったんだ、使わない手はない。不快なら唱える時に離れているんだな」
「そうするわ……本当は、乗り越えなくちゃならないんだろうけどね」
俺の理想に理解のあるカーリアンでさえこうなのだ。
光への疑念に凝り固まった闇夜の眷属をほぐすのは不可能に近い難題なのかもしれないな。
だが今はそういった統治の話ではなく、塔の調査だけを考えることとしよう。